こんにちは、BASSISのYuma(@mgmg_anko)です。
今回は2019年1月4日(金)にブルーノート東京で開催されたマーカス・ミラー(Marcus Miller)のスペシャル・ベース・クリニックに参加してきたので、どんな内容だったのか振り返っていきたいと思います。
また、同時期にはブルーノート東京で「Countdown & New Year Live」が行われています。
そちらの詳細レポートも下記よりご覧になれますのでご興味のある方はどうぞ!

- 当日のクリニック内容が知りたいという方
- マーカス監修であるSireベースに興味のある方
- マーカス・ミラーの音作りに興味がある方
今回のスペシャル・ベース・クリニックが、BASSIS(ベーシズ)にとって今年初のブルーノート東京でした。
2019年初めて見るベーシストが大好きなマーカスミラーだなんて、良い年になりそうです!
それでは、早速「マーカス・ミラー(Marcus Miller)によるスペシャル・ベース・クリニック」の内容を振り返って行きましょう!
目次
マーカス・ミラーとは?どんなベーシスト?

それでは、まず改めてマーカス・ミラー(Marcus Miller)のプロフィールをおさらいしましょう!
プロフィール
マーカス・ミラー(Marcus Miller)は、1959年6月14日、ニューヨークのブルックリンに生まれたベーシストです。
13歳でベースを始め、15歳でプロとして初のギグを経験。
スタンリー・クラーク(Stanley Clarke)やジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)、ラリー・グラハム(Larry Graham)から影響を受けていたそうです。
1981年から1982年の間はモダンジャズの帝王と呼ばれる「マイルス・デイヴィス(Miles Davis)」のバンドに在籍しましたが、自己の音楽を追求するために脱退しました。
1986年には、マイルス・デイヴィス(Miles Davis)のアルバム「TUTU」をプロデュースしました。
なんと収録曲の殆どがマーカス・ミラー(Marcus Miller)の作曲であり、ベースだけでなく、ギター、クラリネット、サックス、シンセサイザー、ドラムプログラミング等様々な楽器で参加しています。
ベースプレイの特徴としては、Fenderジャズベースから奏でられるドンシャリサウンドのスラップ奏法が有名で、ベース界に大きな影響を与えています。
世界最高峰ベーシストだと謳われながら、ベーシストという枠だけに収まることなく、何でもこなしてマルチな活躍を私たちに魅せてくれる超人的人物です。笑
ディスコグラフィ
タイトル | 発売年 | 注釈 |
---|---|---|
Suddenly | 1983 | Warner Bros. |
Marcus Miller | 1984 | Warner Bros. |
The Sun Don’t Lie | 1993 | Dreyfus Jazz |
Tales | 1995 | Dreyfus Jazz |
M² | 2001 | Telarc |
Silver Rain | 2005 | Koch |
Free | 2007 | 3 Deuces |
Marcus | 2008 | Concord |
Thunder(with SMV) | 2008 | Heads Up |
The Other Tapes | 2008 | Dreyfus Jazz |
Renaissance | 2012 | Dreyfus Jazz |
Afrodeezia | 2015 | Victor |
Laid Black | 2018 | Blue Note |
おすすめ動画
1つ目の動画の「Run for Cover」は1991年によみうりランドの野外音楽堂「オープンシアターEAST」で開催された「LIVE UNDER THE SKY ’91」のライブ動画です。
惜しくもライブ会場であった「よみうりランドEAST」の呼び名でお馴染みのよみうりランドの野外音楽堂「オープンシアターEAST」は2013年5月6日に閉鎖されてしまいました。
ライブではマーカス・ミラー(Marcus Miller)のメインベースである1977年製のFenderジャズベースが唸り、芯のあるドンシャリサウンドを聞くことができます。
2つ目の動画の「Blast」はマーカス・ミラー(Marcus Miller)本人の説明によると、「トルコの音階とオールドスクール・ヒップホップのビート」を取り入れた曲となっているそうです。
トルコの首都であるイスタンブールに滞在した際にトルコ音階のクラリネットを入手し、曲の着想を得たそうです。
トルコ音階ということもあり、民族音楽のようでありながらとても迫力のあるライブとなっています。
3つ目の動画の「Hylife」「B’s River」は2015年に発表されたソロアルバム「アフロディジア(Afrodeezia)」に収録されているBASSIS(ベーシズ)の2人が大好きな楽曲です。
自らのルーツを力強く表現した「アフロディジア(Afrodeezia)」には2012年の第55回グラミー賞で最優秀R&Bアルバム賞を獲得したアメリカ合衆国のジャズピアニスト「ロバート・グラスパー(Robert Glasper)」も参加していることで話題となりました。
紹介した「Hylife」「B’s River」のライブを見てわかる通り、とても繊細な楽曲となっています。
目を瞑って聴くだけでアフリカの文化や感性を感じられ、土を踏みしめているような気さえしてきます。
ソロ回しではマーカスがバッキングに回りますが、それがまた主役の楽器を引き立てつつも、気持ちいいフレーズやリズムを刻んでいてとっても良いんです…!
マーカス・ミラーのベース・クリニック!当日の内容は?

当日のクリニックは予定60分~70分で、マーカス・ミラー(Marcus Miller)本人からベース奏法やグルーヴ、サウンドメイキング(音作り)について解説があり、後半ではトークセッション形式の質問コーナーも設けられていました。
- マーカス・ミラーがベースの奏法やバンドのグルーヴを解説
- Q&Aコーナー
会場に入ると、ステージにはピカピカの美しいSireベースが数本並べられていました。

Sireは、マーカス・ミラー(Marcus Miller)本人による監修の元に製造されたベースです。
今回のクリニックはSireベースの紹介も兼ねたものとなっており、「Sireとマーカス・ミラー(Marcus Miller)、出会いの秘話」について本人の口から語られていました。
Sireとマーカス・ミラー(Marcus Miller)が共同でベースを開発するにあたったきっかけについてベース・クリニックで語られていた内容をご紹介します!
1.Sireからの熱烈アプローチ
どうやら僕と仕事がしたいとのことらしい。
でも僕は知っての通りFenderと契約して仕事をしているから、その話を一度断ったんだ。
だけど、その韓国のベースメーカーは「Fenderと仕事をしていることは承知していますが、その上で声を掛けました。どうしてもあなたと仕事がしたいのです。我々の造るベースは初心者に向けた安価なベースなので、Fenderと競合にはならないはずです。一度でいいから話を聞いてください。」と言って、引かなかった。
韓国のベースメーカーというと、あまり聞いたことがありません。
1度は断られても引かないなんて、「マーカス・ミラー(Marcus Miller)と仕事がしたい」という強い熱意が伝わってきます。
2.Sireとの共同開発決意
そしたら、本当に彼らは韓国から大阪にやってきたんだ。
そして、彼らが造っているベースが思いの外、良いものであると僕はそこで感じた。
僕はFenderと長年仕事をしてきたけど、丁度何か新しいことを始めたいと思っていたんだ。
初心者のベーシストに「長く使える安価で良い楽器を届けたい」と僕は考えた。
僕の周りでもそうだけど、今のキッズたちは、Instagram(インスタグラム)やPlayStation(プレイステーション)ばかりずっとやってるんだ。
そういうものじゃなくて、僕はもっと楽器をプレイして欲しいって思うんだ。
そして僕は韓国のベースメーカー、Sireと契約を決意したんだ。
Sireの熱意もさることながら、マーカス・ミラー(Marcus Miller)に声をかけるタイミングも良かったのかもしれません。
そして「ベース初心者や子ども達に良いベースを安く提供する」という形で、一時代を築いたベーシストの1人として「ベース界を担う新しい世代に貢献したい」という気持ちが汲み取れるような気がします。
3.Sireベース完成!1st Generation
「ネックは70sでピックアップは60sの仕様にしろ」などとね。
Sireの人間はそれを一生懸命メモしていたよ。
最終的なサウンドチェックとして、ミキシングボードに直接ベースを繋いで、音を確認したりもした。
そうやってSireのベースは出来上がったんだ。
しかし、当初はSireのベースを置いてくれる楽器屋はあまりなかった。
マーカス・ミラー(Marcus Miller)の名前はよく知られているが、「Sireというまだ無名のメーカーはどうなんだ?」と言われていたからね。
マーカス・ミラー(Marcus Miller)のこだわりをふんだんに練り込みながら、綿密な改良とサウンドチェックを重ねて完成したSireベース。
これが、Sireベースの「1st Generation」と呼ばれるモデルです。
しかし、マーカス・ミラー(Marcus Miller)の名を以ってしても、殆ど名の知れない楽器メーカーに対しては、なかなか厳しい現実が待っていたようです。
4.ついにSireベース販売開始!その反響はいかに?
売れ行きはというと、発売した途端から電話が鳴り止まないほど注文がたくさん届いた!
それも、初心者よりもプロのベーシストたちに支持されて驚いた。
皆が僕に「Sireを買ったよ!」と連絡してきたんだ。
Sireベースのクオリティの高さに、Fenderも思わずこう言った。
「競合にならないと聞いていたのだが、話が違うのではないか?」と。
そこで、僕はFenderとの契約を切ったんだ。
Sireと新しい仕事をしていこうと決めたんだよ。
この話をした時、当日の通訳を担当していたお姉さんに「ネット販売なのに、注文は電話なの?」とツッコミを入れられていました。笑
マーカス・ミラー(Marcus Miller)当人の予想を上回る人気と売れ行きで、大成功を収めたSireベース!
さすがの大手Fenderも、その様子には驚いたようです。
5.ユーザーのニーズに寄り添った2nd Generation!
「もっとネックはああしてほしい」「ピックアップはこうしてほしい」ってね。
その意見を取り入れて作ったベースが、今回の2nd Generationという訳さ!
Sireはサスティーンの伸びがとにかく素晴らしくて、僕も驚いた程なんだ。
Fenderを弾いている時はビブラートやトリルで音を伸ばしていたけど、Sireの場合、それをしなくても音が伸び続けるんだよ!
以上が、Sireとマーカス・ミラー(Marcus Miller)がともにベースを製造することになった秘話になります。
後半ではSireベースを使用した実演もあり、マーカス・ミラー(Marcus Miller)が一音をポーンと鳴らすと、驚く程長くなり続けサスティーンに納得しました。
そして、名曲であるDetroitの演奏があり、改めて繰り出されるサウンドはとても安価なベースのものではないと感じました。
普通に1本我が家にほしい…笑
Sireベースで目指せ!マーカス流のサウンドメイク

上のような意見がSireユーザーから寄せられることが多いらしく、なかなかSireを持っていてもマーカス・ミラー(Marcus Miller)のサウンドに近づけないと悩んでいる方々のために、音作りについて本人が直々に語ってくれました。
- Master Volume
- Master Tone
- Pickup Blend
- Treble
- Middle
- Middle Frequency
- Bass
- Active/Passive Switch
ボリュームは全開にする。
トーンは全開にするとアグレッシブになりすぎる為、全開よりは少し削る。
バランスは基本はフロント:リア=50:50にしているが、早いフレーズの時はリア寄りに振り、クリアなサウンドにしている。
トレブルは耳が痛くなるので、あまり上げすぎない。半分よりほんの少し上げるくらい。
ミドルは音の輪郭をはっきりとさせたいときに、を少し上げてみたりして調節している。
ローミッドは、ほぼベースと同じ役割をする為、音がこもりやすいような場所では、ベースの代わりにローミッドを上げるようにしている。
ベースは少し上げているが、上げすぎると木造の会場やホールだと音がもっこりとしてしまうので環境によって調整している。
アクティブスイッチはON(※直接語ってはいませんでした。)
それを探しながら弾いてみると良いよ。
Sireでの音作りということでしたが、マーカス・ミラー(Marcus Miller)の音作りの基本理念としては全てのベースに共通するのではないかと思います。
マーカスサウンドを目指す方は是非参考にしてみてください!
Q&Aコーナー!参加者とマーカス・ミラーのトークセッション

当日は約60分~70分という短いタイムスケジュールではありましたが、参加者とのトークセッション形式で質問コーナーが用意されていました。
当日の質問内容と回答をレポートにしましたが、筆者の解釈とフィルターを挟んでいるためご了承ください。
それでは、質問内容とマーカス・ミラー(Marcus Miller)の回答をまとめたのでさっそく見ていきましょう!
質問1「エレキベースの歴史は浅く弾き方に決まりはない」
貴方の手から繰り出されるサウンドに驚きを隠せません。
「もしかして魔法の手なのでは?」と思う程。
指のどこで弦を爪弾いていますか?
ベースの歴史はまだまだ浅いから、自由にクリエイティブに弾くんだ。
こうしなきゃいけないっていう決まりはないよ。
元々はベースは1フィンガーで弾かれていた楽器だったんだけど、それが2フィンガーになり、今ではスラップをする者もいる。
どんどん自由に弾いていけばいいんだ。
質問2「2nd Generationモデルは改良され性能が上がっている」
新しく、2nd Generationのベースが欲しいけど、以前のモデルとの違いを教えてください。
ピックアップも以前のものから改良し性能が上がっているんだ!
質問3 「ベースの上達には繰り返し反復練習することが大切」
かつて、自分も当時一緒に仕事をしていたバンドのドラマー(先輩)から「このフレーズを1時間ずっと弾いていろ」と言い付けられたことがある。
そのドラマーが見ているうちは、反復してそのフレーズを練習したが、ドラマーが外出した途端にテレビを見て休憩したよ。
そして車で帰ってくる音がすると、急いでまたベースを構えて、ずっと弾いていたようなふりをしていたんだ。笑
でも、やはり繰り返し練習することが大切だよ。
質問4「弦は45-105ゲージのラウンドワウンド弦を使用している」
フレットレスベースや、ウッドベースには、手触りのスムーズなフラットワウンド弦を張るよね。
僕はスラップをすることが多いからラウンドワウンド弦を張っているけど、フラットワウンドならではの柔らかいサウンドも好きなんだ。
だから、小指でブリッジ側の弦をミュートしながら演奏(パームミュート奏法)することで、フラットワウンド弦のようなニュアンスを出して演奏することが多いよ。
質問5「まさかのベースを持ち替えてTeen Townを演奏」
Sireベースについて気になります!
申し訳ないですが、ステージに並んでいるベースに持ち替えて音を鳴らしてみてはいただけませんか?
ステージに並んでいるものは弦高などが僕のコンディションと少し違うけど、リクエストに応えるよ!笑
スペシャルなことに、ベースを持ち替えて、ベーシストならご存知「ジャコ・パストリアス(Jaco Pastorius)」がベーシストとして加入していたジャズ・フュージョン・グループ「ウェザー・リポート(Weather Report)」より代表曲「Teen Town」をマーカス・ミラー(Marcus Miller)Ver.を演奏してくれました。
マーカス・ミラー(Marcus Miller)Ver.はソロアルバム「The Sun Don’t Lie」に収録されています。
当日の演奏ではありませんがYouTubeにライブ動画が上がっていましたので参考までに掲載しておきます。
まとめ
いかがでしたか?
今回は2019年1月4日(金)にブルーノート東京で開催されたマーカス・ミラー(Marcus Miller)のスペシャル・ベース・クリニックのレポートを書かせていただきました。
至近距離で見ることができ、Sireベース誕生秘話やサウンドメイキングなど語っている姿は普段のライブで見るマーカス・ミラー(Marcus Miller)とはまた違って刺激を受けました。

今回のまとめですが、特に大事だと感じた部分を抜粋しました!
- Sireベースにはマーカス・ミラーの思いがこもっている
- エレキベースの歴史は浅いため自由でクリエイティブ
- Sireベース2nd Generationモデルはさらに改良され性能アップ
- ベースの上達には繰り返し反復練習することが何より大切
- Sireベースの音はFenderに引けを取らない程良いものだった
今回参加したスペシャル・ベース・クリニックはSireを前面に押し出した内容となっていましたが、Sireと契約するまでの経緯や優しく丁寧に質疑応答する姿を見て、若いベーシストたちに期待し、次世代に繋げていこうとするマーカス・ミラー(Marcus Miller)の思いを感じました。
また、クリニックには本ツアーのドラマーである「アレックス・ベイリー(Alex Bailey)」とキーボードの「ジュリアン・ポラック(Julian Pollack)」も一緒にステージに上がっていました。
マーカス・ミラー(Marcus Miller)が色んな実演をする度に、指示がなくても息ぴったりなアドリブ演奏を見せ、こちらも圧巻でした!
私も普段マーカスをコピーしていますが、Sireを手にした暁には、是非今回のクリニックで聞いたサウンドメイクを参考にし、気持ち良い音で弾いてみたいです!
今回のスペシャル・ベース・クリニックは抽選だったということもあり、残念ながら参加できなかった方やマーカス・ミラー(Marcus Miller)を目指すベーシストの方々にこのレポートが役立つと筆者も嬉しいかぎりです。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
少しでも参考になった、役に立ったと感じていただければシェアをしていただけると嬉しいです!
